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マゾヒズム文学の世界

谷崎潤一郎・沼正三を中心にマゾヒズム文学の世界を紹介します。

目次


はじめに
マゾヒスト・谷崎潤一郎―真に理解しうる人々による真の理解を目指して

総論
日本のマゾヒズム文学の三大要素
スクビズム総論
苦痛と陵辱
愛情の一方通行
女の忘却
手段化法則と物化倒錯
生体家具の代替性と慈畜主義
セルヴェリズムとパジズム
トリオリズム総論
ミスター・ポストマン―マゾッホと谷崎のトリオリズム
白人崇拝論
明治人の仰ぎ見た西洋人
韓国崇拝論
ドミナの類型学
「思想小説」か「好色文学」か
谷崎潤一郎と沼正三の共通点と相違点

谷崎潤一郎序論
『創造』論~美男美女崇拝
『女人神聖』論~貴族の兄妹、奴隷の兄妹
『嘆きの門』論~華族様の恋

谷崎潤一郎のスクビズム
『少年』論~スクビズムの楽園
『富美子の足』論~やっぱり足が好き!
『捨てられる迄』論~堕ちていく快楽、委ねる快楽
『神童』『鬼の面』論~自慰と妄想の青春

谷崎潤一郎のトリオリズム
『饒太郎』論~新たなる快楽の扉

谷崎潤一郎全集全作品ミニレビュー
第一巻 <「象」「刺青」「麒麟」「少年」「幇間」「飆風」「秘密」「悪魔」「羹」「続悪魔」他>
第二巻 <「恋を知る頃」「熱風に吹かれて」「捨てられる迄」「春の海辺」「饒太郎」「金色の死」「お艶殺し」他>
第三巻 <「創造」「法成寺物語」「お才と巳之助」「獨探」「神童」「鬼の面」他>
第四巻 <「恐怖時代」「亡友」「人魚の嘆き」「魔術師」「既婚者と離婚者」「鶯姫」「異端者の悲しみ」他>
第五巻 <「女人神聖」「仮装会の後」「少年の脅迫」「前科者」「人面疽」「金と銀」「白昼鬼語」他>
第六巻 <「嘆きの門」「西湖の月」「富美子の足」「或る少年の怯れ」「秋風」「天鵞絨の夢」他>
第七巻 <「途上」「検閲官」「鮫人」「蘇東坡」「月の囁き」「鶴悷」「AとBの話」他>
第八巻「愛すればこそ」「青い花」「永遠の偶像」「彼女の夫」「お國と五平」「本牧夜話」「白狐の湯」「アヱ゛・マリア」他

谷崎潤一郎作品の二次創作
『悪魔』『続悪魔』の二次創作
『鶯姫』の二次創作
『無明と愛染』の二次創作
『神童』の二次創作

谷崎潤一郎小事典
谷崎潤一郎歳時記
谷崎潤一郎作品に出てくる作家・本
谷崎潤一郎作品に出てくる食べ物

沼正三のスクビズム
『手帖』第三章「愛の馬東西談」~アリストテレスの馬
『手帖』第一三八章「和洋ドミナ曼陀羅」~ドミナを選ばば曽野綾子
『手帖』第二八章「性的隷属の王侯たち」

沼正三の白人崇拝
沼正三の白人崇拝(1)―英伊混血女性との文通

『ある夢想家の手帖から』全章ミニレビュー
第1巻「金髪のドミナ」
第2巻「家畜への変身」
第3巻「おまる幻想」
第4巻「奴隷の歓喜」
第5巻「女性上位願望」
第6巻「黒女皇」

家畜人ヤプー図鑑
プキー

沼正三小事典
『ある夢想家の手帖から』に紹介されている文献
『ある夢想家の手帖から』に紹介されている映画
沼正三の谷崎潤一郎論

戦後の風俗小説
大和勇「金髪少女クララさま」「金髪パーティ」
田沼醜男「黄色いかなしみ」

外国文学
ドミナの言葉遣い―佐藤春夫訳「毛皮を著たヴィーナス」

ネット小説の感想
あらたなる神々の創生―キム・イルケ「韓日ヤプー秘史―国辱マゾヒスティックワンダーランド」感想

新和洋ドミナ曼荼羅
ギリシア神話の女神
ギリシア神話の美女
ヘブライ神話の美女
敗者のトラウマ~戦後日本のジャクリーン崇拝
アルペンスキーの美人選手
イスラエルのアイェレット・シャクド法務大臣の大イスラエル主義
韓国系アメリカ人写真家チョン・ユナの昭和天皇生首アート

その他創作物
文豪対話篇
天国の沼正三
青春の思い出
美男美女賛美論
続・美男美女賛美論
片瀬海岸物語
3月11日
マゾヒズムの階級的考察または生きづらい世の中を生き抜くために
続・マゾヒズムの階級的考察または生きづらい世の中を生き抜くために~白昼夢大作戦
女神キャロラインの降臨
・父の車で 1/3 2/3 3/3

H家の人々
プレイボーイクラブ
【詩集ノート】 ※常時追加

その他感想記事
Fetish★Fairyさん新作の感想
中村佑介表紙画の『谷崎潤一郎 マゾヒズム小説集』
月蝕歌劇団公演「沼正三/家畜人ヤプー」の感想
エムサイズさん「椅子になった勇者」の感想
マゾヒズムというドグマ―エムサイズ「超私立!女の子様学園」
「家畜人ヤプー」の二次創作

雑記
今後の編集方針について
HNの由来と作家:白野勝利氏
私のマゾ遍歴
倉田卓次元裁判官死去
伝説のネット批評家:kagamiさんのマゾヒズム論

掲載情報
「女神の愛」第3号
「女神の愛」第4号

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タグ : マゾヒズム小説 谷崎潤一郎 沼正三 家畜人ヤプー 白人崇拝

田沼醜男「黄色いかなしみ」

戦後の風俗雑誌に掲載されていた素晴らしいマゾヒズム小説をご紹介していきます。
本シリーズ執筆には三和出版および風俗資料館の多大なご協力をいただいています。


今回は

田沼醜男「黄色いかなしみ」

をご紹介します。
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「黄色いかなしみ」は、昭和41年に「サスペンスマガジン」に掲載された作品です。
田沼醜男は「奇譚クラブ」で「マゾヒズム天国」というエッセイを連載していた、当時の同誌を代表するマゾヒズム作家で、強烈な白人崇拝思想を持っていたことで知られています。
「ある夢想家の手帖から」第一二〇章では本作の作者を「金髪少女クララさま」「金髪パーティ」の作者である大和勇と紹介していますが、初出では田沼醜男の作と明記されています。
おそらく大和勇は田沼醜男の別のペンネームです。
内容的にも文体からみても、「金髪少女クララさま」「金髪パーティ」と本作は同じ作者の作品であることがありありとうかがえます。
共通する特徴は、①白人男女と日本人の主人公の体格差を象徴とする劣等感、②白人崇拝とトリオリズムのミックスです。

本作も舞台はアメリカで、日系二世の主人公が、TVでも活躍した元ストリパーで金髪碧眼の白人女性:ハニイ・ジャケットとその夫で俳優のジルの家内奴隷となるというシンプルなストーリーです。

主人公の「私」は白人女性に強い憧憬を抱いている白人崇拝者で、ストリッパー時代のハニイ・ジャケットをファンとして崇拝していました。
ハニイはその後ジルと結婚しますが、「私」とハニイはたまたま再会し、「私」はハニイに奴隷志願します。

「僕はあなたのことを思うと、黄色い女となんか、とても寝る気になれませんでした」
「あたしに関係ないよ。金髪が黄色い女にくらべて、どんなによくたって、知ったことじゃない、勝手に熱をあげて、焦がれ死にでもしたらいいのサ」
「ハニイさま、お慈悲を……どうか、お慈悲を……」私は震えながら哀願した。
「お慈悲だって?フフ……そんならお前の望みをかなえてやろうか」彼女は碧い大きな眼でジッと見つめた。
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かくして「私」はジルとハニイの家に奴隷として飼われることになります。
「金髪少女クララさま」「金髪パーティ」でも見られた下着への執着、夫婦の寝室での奉仕がたっぷりと描かれます。

あるとき、愛の習慣が終わると、ハニイは私の髪の毛を掴んでいった。
「あたしを掃除させてやろうか?」
「ぜひ、ぜひ、お願いします!」私は仰向いたまま叫んだ。
「ジャップが金髪の身体を掃除するんだからね、舌を使ってやるのよ」
「は、はい、わかっています」
(中略)
「この黄色いトイレットペーパーめ!」彼女は嘲笑を浮かべながらゆっくりと立ちあがった。
(中略)
「チビ!醜男!黄色奴隷!」
アッ!と思ったがもう遅かった。
後手に縛られていては隠しようもなく、ヒクッヒクッとケイレンしながら、七色の虹を見た。
「こいつ、こんな醜いもの出しやがって……畜生!」ハニイは怒った。海老のようにまるくなって、なおもケイレンし続ける私の身体を滅茶苦茶に踏ンづけるのだった。
それ以後というもの、私はフンドシさえ着用することを禁じられた。そのかわり昔からお馴染みのビニール袋をかぶせるように命じられたのだった。
「こうしとけばお前がどんなに夢中になったって勝手にサ。あたし達の知ったことじゃないわ」ハニイは棍棒の先で小突きながらいった。
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クライマックスは「手帖」に引用されている夫婦の性行為への奉仕の場面です。

「ねえ、あんたもこいつにさせてみたら?」
とある晩、ハニイがジルにいった。
(中略)
「ハハ……こいつ震えてるわ」ハニイがそういってうしろから、私の鼻をつまんだので私は息が出来なくなって金魚のように口を開いた。
するとすぐにジルが割り込んで来たのだった。
(中略)
「ねえ、あんた」とハニイは甘えた声でいい、私の肩に、うしろから肩車になって乗ってきた。「もっといろんなことして愉しもうじゃない?この馬鹿を使ってサ」
「そうだな、この野郎はまた、俺たちの奴隷になって使いつぶされる、嬉しくて仕様がないんだから、便利なもンだ」
「フフ……この恰好、こいつの黄色い親が見たら、なんて思うかしらね」
実際、親に見せられる恰好ではなかった。
私の首根ッこは、うしろからハニイの足に喰わえこまれ、口腔はジルに押しこまれて物も言えない状態だった。
要するに、私の頭蓋骨をあいだにして、二人は愛し合っていたのだ。
黄色人種でありながら誇りをもって生きていた私の日本人の両親が、息子のこういう姿を見たら、どういう感慨を持つだろうか…。
私は前から後から責めあげられながらさすがに情けない思いがした。
でも黄色い肌の人間は白人の道具になるより仕方ないのだ。
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本当に美しい場面ですね。
心身ともに激しく陵辱されている状況ながら、なにか父母の愛情に包み込まれるような暖かい陶酔感を感じてしまいます。
はるか頭上で睦み会う白人夫婦に下半身で自分の頭を包み込まれ、自分を生み育てた実の両親に対する思いと決別する。
黄色く醜い夫婦から生まれた呪わしい運命から、福音をもたらす白く美しい夫婦の下で新しく生まれ直した瞬間のような甘い陶酔。
思えば黄色人種が白人夫婦に「父母」を感じるなど畏れ多いことですが、クリスチャンが神に対して「父」を感じるように、自分を今の自分として「作り直した」造物主としての「父母」を、ジルとハニイの白人夫婦に感じてしまいます。

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