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マゾヒズム文学の世界

谷崎潤一郎・沼正三を中心にマゾヒズム文学の世界を紹介します。

新和洋ドミナ曼荼羅(3)―ヘブライ神話の美女

マゾヒストにとっての理想のドミナを、具体的に列挙しています。

第二回目は、ヘブライ神話に登場する美女を取り上げます。
『旧約聖書』『新約聖書』によって世界史に最も強い影響を与えた古代神話です。


リリス
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ジョン・コリア『リリス』
人類最初の女性
『旧約聖書』の「創世記」では、最初の人間は男性のアダム、最初の女性はその妻のイヴで、イヴはアダムのあばら骨から造られたとされています。
しかし、イヴが造られる以前に、アダムにはリリスという妻がいたという伝承もあります。
リリスはイヴとは違い、アダムと同じように土で造られました。それだけにイヴのようにアダムによく従う従順な妻ではなく、アダムの支配を受け入れず、性交の際には騎乗位を求めます。

悪魔たちと…
その上リリスはアダムを捨ててエデンの園を去り、紅海沿岸に住みつきました。そこで数多の悪魔と淫蕩に関係を持ち、リリンと呼ばれる悪魔たちを産みます。
アダムはイヴと結ばれた後も美しいリリスを忘れがたく、神にリリスをエデンの園に戻してほしいと懇願します。神は天使を遣わしてリリスを説得しますが、リリスはこれを拒否します。おそらく、悪魔との魅惑的な性交はリリスにとって、アダムとの退屈な性交とは比べ物にならない快楽だったのでしょう。
リリスの産んだリリンはアダムとイヴの子孫たちを誘惑し、破滅させます。リリス自身も悪魔としての能力を身につけ、男児だったら生後八日間、女児だったら生後二十日間、リリスはその運命を好きにすることができ、生かすも殺すも思いのままにできるようになったといいます。
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ギュスターヴ・アドルフ・モッサ『彼女』


バテシバ
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ギュスターヴ・アドルフ・モッサ『ダビデとバテシバ』
水浴びを見て
最盛期の古代イスラエルを指導した大預言者ダビデ。そのダビデが犯した大きな罪悪が、バテシバとの不倫です。
ある日、ダビデは宮殿の屋上を散策していたところ、眼下にうっとりとするほど美しい女がまばゆい裸体をあらわにして水浴びをしているのが目に入りました。欲情に駆られたダビデは急ぎ美女の素性を調べさせたところ、美女は勇猛な軍人ウリヤの妻バテシバでした。それを知ってもダビデは恋心を抑えることができず、バテシバを宮廷に呼び、想いを遂げてしまいます。

夫を抹殺
さぞかし激しい情事だったのでしょう。バテシバはすぐさま妊娠してしまいます。あせったダビデは様々な計略で姦通の証拠を隠蔽しようとしますが失敗し、追い込まれたダビデは卑劣にも王の権力を悪用し、ウリヤの上官に彼を戦地に一人置き去りにして退却するよう命じました。こうしてウリヤを死に追いやったダビデは、寡婦となったバテシバと盛大な結婚式を挙げ、后としてしまいす。


デリラ
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ピーター・ポール・ルーベンス『サムソンとデリラ』
銀貨千枚で愛人を…
デリラは、イスラエルの預言者サムソンを死に至らしめた美女。
サムソンは超人的な怪力の持ち主で、パレスチナ人と抗争中のイスラエルを指導していました。
サムソンがデリラの美貌に夢中になったことを知ったパレスチナ人の指導者は、デリラを銀貨千枚で買収します。デリラはある晩サムソンを寝かしつけると、サムソンの怪力の秘密を巧みに聞き出します。サムソンの怪力の秘密は髪の毛。パレスチナ人はこっそり忍び出してサムソンの髪の毛を切り、サムソンの両目を剣で抉り出してしまいます。サムソンは暗い監獄で石臼を挽くという辱めを受けることになります。
このサムソンとデリラの神話は、ザッヘル・マゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』にも引用されています。


ユーディット
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カラバッジョ『ユーディットとホルフェルネス』
体を武器に
敵将の首を刈り取った神話で知られる女傑。
アッシリアの将軍ホルフェルネスの軍によって占領されたイスラエルの山岳都市ベトリア。ベトリアの貴族出身の未亡人ユーディットは、祖国を救うために身を投げ出す覚悟で立ち上がります。ユーディットは美しく着飾ってアッシリア軍陣営に赴き、ホルフェルネスに会わせてくれと頼みます。
ホルフェネウスはベトリア最高の美女に心を奪われ、ユーディットを幕舎の寝室に招き、思いのたけ肉欲を満たします。激しい性交に満足したホルフェルネスが深い眠りに落ちた瞬間、機会を窺っていたユーディットは剣を引き抜き、ホルフェルネスの首をひと思いに切り落としてしまいます。動転したアッシリア軍はベトリアを放棄して逃走してしまい、ベトリアには自由と平安が取り戻されました。
ベトリア市民は熱狂的にユーディットを讃え、絶え間ない賛辞が送られました。未亡人が男に体を許したということは、神の戒律に反するはずですが、この際それを問題にする者はいませんでした。
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ジョルジョーネ『ユーディット』                      ルーカス・クラナッハ『ユーディット』


サロメ
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ギュスターブ・モロー『ヘロデ王の前で踊るサロメ』(部分)
義父であるパレスチナ総督ヘロデ・アンティパスをして、イエスに洗礼を施した聖洗礼者ヨハネの首を切らせた魔性の美少女。
舞で王を魅了
西洋絵画で「美女と生首」の組み合わせがモチーフとされている場合、美女が自ら剣を持っている場合はユーディト、美女が盆に生首を載せている場合にはサロメです。
サロメはヘロデの弟の娘でしたが、ヘロデは弟の死後サロメの母ヘロディアをわがものにします。聖洗礼者ヨハネはこれを批判したたため逮捕され、ヘロデの宮殿の牢獄に繋がれます。ヘロディアはヘロデにヨハネを処刑するようにしきりに求めますが、ヘロデはヨハネを預言者として畏れていたため、処刑をためらいます。
ある晩宮殿では宴会が開かれます。サロメの美貌に夢中になっていたヘロデは、サロメに舞を披露するように求めます。サロメは舞う対価としてどんな頼みごとでも聞くかとヘロデに迫ります。魅惑されたヘロデは操られるように「どんなものでもサロメの欲するものを与える」と誓約してしまいます。

なぜ聖洗礼者の首を?
サロメは美しい舞を見せた上で、ヘロデに「聖洗礼者ヨハネの首」を求めます。ヘロデは「他のものなら何でも与えるから、それだけは求めないでくれ」とサロメに懇願しますが、サロメはあっさりと拒絶します。かくしてヨハネは斬首され、血の滴るヨハネの生首が盆に載せられ、サロメのもとに運ばれました。
サロメはなぜヨハネの首を求めたのでしょうか。ヨハネに激しく非難されていた母ヘロディアが、娘を利用してヨハネを殺させたと解されています。
サロメの神話は後世数限りない芸術作品のモチーフになりました。もっとも有名な作品のひとつがオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』です。この戯曲では、サロメはヨハネに恋し、キスを拒絶されたために、サディスティックな欲望を満たすため、ヘロデにヨハネの首を求めたと解されています。
自ら男の首を落とした女傑ユーディットと、美貌によって男たちを操って男の首を手に入れた魔性の美少女サロメ。
あなたはどちらが好みですか?
沼正三なら言下に「ユーディット」と答えるでしょう。
谷崎潤一郎は、どちらも好きですね。
ちなみに私はサロメ派です。
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ジャン・ベネール『サロメ』

タグ : マゾヒズム 谷崎潤一郎 沼正三 家畜人ヤプー ある夢想家の手帖から 寝取られ 三者関係 白人崇拝 サロメ リリス

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