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マゾヒズム文学の世界

谷崎潤一郎・沼正三を中心にマゾヒズム文学の世界を紹介します。

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文豪対話篇

 1年半も新しい記事を書けませんでした。構想はあるのですが、なかなかまとめられません。まもなく、再開できそうですので、同志の皆様は、また見に来ていただけると幸いです。
 
 ちょっとしたジョークを思いついたので、勢いをつけるために掲載いたします。




 1960年代前半のある日、文豪Mが、文豪Tを訪問した。

M お久しぶりです。先生。
T やあ、よく来たね。まあ掛けたまえ。
M どうも。いかがですが、お加減は。
T 心臓をやって以来、この通り屍のようだよ。
M いやいや、ますますお元気そうに見えますがね。
T 君の体がうらやましい。君の書くものを読んで感心したことはないが、君の肉体にはいつも感心してしまう。日本人の肉体がここまで壮健になれるとはね。この国が自信を取り戻すためには、経済を復興させることよりも、君の様に美しい肉体を作り上げることの方が重要だと思うね。
M ボディ・ビルディングというやつです。しかし、これはあくまで見かけだおしでしてね。実戦で役に立つ体じゃありません。腰抜けの政府に変わって国を守るために、実戦訓練を始めようかと思っているんです。
T 気違いが…
M なにか?
T いや別に…ほどほどにね。
M なんといっても、この国が精神的に立ち直るためには、あの憲法を何とかしなくちゃならない。そして、自らの手で、新しい国のかたちを創り出さなきゃいけないんです。
T 革命かね。もの書きよりはそちらのほうに才能があるかもしれんね、君の場合。
M 先生は、どのような憲法が、この国にはふさわしいと思いますか?
T 知ってるだろう。興味がないんだよ、そういうことには。
M 知っています。ですが、どんな社会が理想的な社会か、それくらいは考えてらっしゃるでしょう。
T まあそれは…
M 女がすべての権力を握り、男は女に従う社会?
T 君は私の思想を誤解している。君らしい解釈だがね。社会が男の原理で動いているからこそ、社会と隔絶した秘め事の世界で、女の支配する秩序が生まれる。それが男の心を浄化し、自然に戻す。私の書いてきたのはそういうことだよ。
M そう、確かに今までの先生の作品は、秘め事の世界に収まっていた。しかし先生、我々はあの夏、世の中を支配していた思想がいっぺんにひっくり返されるのを見てしまった。いまこの国を支配しているこの甘っちょろい思想も、すぐにひっくり返されるときがくる。おまけに科学技術のこの発展。ケネディは近くアメリカ人を月に送るとぶち上げた。水爆を使えば地球上から人類を一掃することだってできるんです。もはや思想に制限を設ける必要はないんですよ。頭の中で思っていること以上のことが、現実に起こってしまう時代なんです。先生、先生の頭の中にある世界、小説にするときですよ!
T 私も文豪と呼ばれ、いろいろ守るものができてしまった。この年になって、革命は起こせんよ。
M 書けないというのなら、私にだけ教えてください。
T あまり年寄りを苛めないでくれ…
M 先生はお好きでしょうが。苛められのが…
T 女に苛められのは好きさ。しかし男に苛められても…
M そうでしたかな?私のような壮健な男でも?
T 君にはかなわん…
M 教えてくださいよ、女が支配する社会!
T 女が支配する社会!そんなもの、物心ついたときから考えているわい!
M くっくっくっ…すごいぞ…。やはり、閣僚、国会議員、高級官僚はすべて女性?
T そうだな。昔は、高貴な女は仕事などせず、遊んで暮らすべきだと思っていたが、近頃の女を見ていると、活発に働く女というのもいいものだと思うようになった。ただし、肉体労働は全て男にやらせるべきだろうね。
M 家庭では、夫唱婦随を逆転させた「婦唱夫随」となるわけですね?
T ああ。男には財産権はないから、婚姻は雇用契約のようなものになり、どんどん妻に有利なものになる。しまいには奴隷契約のようなものになってしまうだろうね。
M 身分制度はどうなります?
T 悪しき平等は廃される。貴族と奴隷。これだけでいいんじゃないかな。美しい奴が貴族になって、醜い奴が奴隷になる。
M 素晴らしいですね…
T そうなったら君、君は子爵くらいにはなれるだろう。僕はもちろん奴隷だ。こんなふうに対等に向かい合うことなんてありえない。僕は君の足元に平伏して、絨毯に顔をつけ、君の履いている靴で項を踏みつけてもらうくらいしなきゃあ無礼になる。どれひとつやってみようか…
M 変態が…
T ん?
M いや別に…今はやめておきましょう。残念ながら奴隷制は、奴隷側の不満と、奴隷主側の同情によって崩壊しました。
T だから、美しい者を貴族に、醜いものを奴隷にしているんじゃないか。そうすれば、奴隷の方も、救われる。自分たちは、綺麗な貴族がぜいたくをするために生きてるんだって考えれば、なぐさめになる。美しい者にはそういう力があるんだ。貴族のほうも、およそ自分たちと同類とは思えない醜い者にたいしての同情は少なくなるだろう。最終的には、奴隷たちはは貴族を神として崇めるようになり、貴族は奴隷たちを家畜同様に見るようになる。そうするともう、秩序を乱そうとするものはいなくなる。そしてそのとき、奴隷たちは世界史上最も幸福な人々になる。実際に神を間近に感じて生きられるんだからな。アメリカの黒人奴隷制も、最終的には崩壊したが、あれだけ長く続いたのは、白人が黒人を自分たちとは比較にならないほど劣っていると信じていたのと同様、黒人も白人のことを、自分たちとは比較にならないほど優れていると信じていたからじゃないかね。白人のあの肉体、白い肌や、金髪や、碧い瞳を前にしちゃあ、無理もないことだと思うね。
M いよいよ穏やかじゃあないなあ…。ということは、人類の貴族は、白人ということになるんですか?
T そうだね。特に金髪碧眼の奴は上級の貴族ということになるだろうね。今世紀に入ったころまでは、そんな世界に向かっていたんじゃないのかね、実際に…
M 日本海海戦が、白人支配の世界を防いだターニングポイントだと思いますが。
T あそこで連合艦隊が破れていたら、日本は艦砲射撃にさらされ、半植民地にされていただろう。そうなると、世界的な反植民地闘争は一気に希望を挫かれ、人種による優劣はいよいよ現実感を持って語られ、奴隷制復活論が語られる…。そう考えると、あながち荒唐無稽な仮想とはいえんかも知れんな…。
M その先は…白人は「神人」に、有色人種は「獣人」に、それぞれ進化する…ナチスドイツの思想そのものだ…
T 問題はその社会に生きる者が幸せかどうか。神になれた人々と、実在する神に仕える人々。どちらも、人類の夢をかなえた人々じゃないか。まあ、今となってはただの狂気でしかないがね。
M あの夏、「無条件降伏」という言葉を聞いて、もしかしたら歴史が再び理想世界に向かいだすのではと期待しませんでしたか。
T 一瞬、期待したね。フィリピンのように、植民地にされるんじゃないかと思って、怖かったけど胸が高鳴ったね。しかし、こうも早く主権を回復するとは。植民地も次々に独立して、もうこの流れは止まらんだろうね。
M いやはや、驚きました。やはり先生の思想は私の想像をはるかに超えておりました。しかしね、先生。いたんですよ。あなたのような思想を持ち、それを異常なほどのスケール大きさでで小説にしている奴が。
T 何だって?
M これは「奇譚クラブ」という風俗雑誌です。ご存じないでしょうね。これに、「家畜人ヤプー」という小説が連載されているんですが、こいつがすごい。白人が支配する未来の世界で、我々日本人が犬やら、椅子やら、便器やらに改造されている。で、そいつらは白人を神と崇めているから、白人に使用されて喜んでいるんです。私はこれからこの作品を大々的に文壇で激賞しようと思っています。しかしなにより一番に、先生にこの感動をお伝えしようと思ったんです。
T 君、私の思想を、そんな安っぽいSFと一緒にするつもりかね?
M 読めば分かります。これは凄いんだ。本当です。
T 読まんよ。私の思想とは違う。
M 残念だ…。先生のためにこんなに仕入れて持ってきたのに…。
T 置いていきたまえ。
M へ?
T 荷物になるだろう。こちらで処分するから。
M ったく…。それじゃあ、そうさせていただきます。さて、大体用も済みましたので、この辺でお暇いたします。
T え?
M なにか?
T いや…もう一杯、コーヒーでも…。
M いや、もう結構。なんです?まだ私に何か御用が?
T M君…一昨日、君が来ると聞いていてから、うれしくて、丸二日かけてこの応接間を掃除したんだ。
M そりゃどうも。土足で失礼しましたかな?
T そ、それから、今朝は口を丹念に洗浄したんだ…それからは水しか口にしていない。
M はぁ。
T それから、君が来るまでの間、五時間ずうっと練習していた。君に言われたとおり、あれから毎日一時間以上は練習しているんだこの張り型で…。
M あんな戯言を本気で実行していたとは…
T たのむ…欲しいんだ、たまらないんだよ。
M 私は自分の精液が飲みたくて土下座するような男を、ノーベル賞に推薦しているわけですか…。
T 文豪といわれるようになった私を、こんな風に残酷に扱ってくれる者は、もう君しかいないのだ。たのむ…。
M 今日はおあずけです。今日から毎日二時間、張り型で練習しなさい。この応接間は私専用にして、毎日二時間掛けて掃除しなさい。それから、これからは原稿の代わりに、ティッシュペーパーに私へのラブレターを書いて、箱に詰めなおして一日一箱、うちに持ってきなさい。靴磨きにでも使ってあげます。言いつけ通りにしていれば、そのうちまた来てあげるかもしれません。今度来た時は、最初からその姿勢で迎えるんですよ。そうすれば、こうして、項を踏みつけてあげますから。そしたらすぐに張り型を使って実演してください。上達していれば、飲ませてあげるかもしれません。
T はい。ありがとうございます。やはりあなたは私の理想です…。
M 礼儀が分かってきたようですね。今日はどちらも飲ませてあげないつもりでしたが、いいでしょう、ちょうどもよおしてきましたので、ごほうびに、トイレの代わりにしてあげます。
T あ、ありがとうございますぅ!

タグ : マゾヒズム 谷崎潤一郎 沼正三 家畜人ヤプー ある夢想家の手帖から 寝取られ 三者関係 白人崇拝 美男美女崇拝 三島由紀夫

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